* ワイヤーの世界史 * →針金の日本史
ワイヤークラフトは、 BC3000年頃から各地の古代文明にて作られていた、大変古い工芸技術です。
はじめは貴金属を一本一本削ってワイヤーを作り、それを材料に様々な工芸品が作られていました。その後工業技術の発展と共に大量生産が可能になり、装飾品から実用品まで様々な用途に使われ普及していきました。
現在ワイヤー素材は、あらゆる産業用途において大変重要な技術の一つであり、ワイヤーを使ったアート&クラフトも、人々に大変親しまれています。

古代:1本1本削り出して作られていた古代ワイヤー
現在発見されているワイヤーの最も古いものは、BC3000年頃・エジプトにおける金銀ワイヤーで作られた装飾品です。
当時ワイヤーの製法は、「金属板を短冊に切る」→「薄い一片を削り出す」→「ねじってプレスし強度を増す」と、非常に手間のかかったものでした。
その後地中海から中近東周辺各地へと、徐々にワイヤー加工技術は広がって行きました。AD3世紀頃、ギリシャ皇帝や上流階級の人々は、金糸・銀糸を織り込んだ衣類を、愛用したと伝えられています。
古代インカ帝国の遺跡からも、エジプトと似た製法で作られたビーズや宝石をつなぐ 極細の金糸が発見されています。

中世〜近代:大量生産の時代・機械の発明と技術の進歩
鉄の発明と共に武器や漁具など、一般社会でも徐々にワイヤーが使われ始めました。大きなきっかけとなったのは、機械の発明と技術の進歩です。
現在でも、ワイヤーは線材を穴を空けた金属パーツ(ダイス)に通し、力をかけて引っ張ることによって形作られます。この製法はBC6世紀ペルシャで最初に使われたと言われています。
ヨーロッパでこの製法が使われ出したのは、AD10世紀とも12世紀(諸説あり)のようです。14世紀ドイツで水力を使った製造機械が、16世紀半ばにはイギリスで、ワイヤーを編む自動機械が開発されました。この結果ワイヤーの大量製造が可能になり、色々な製品が幅広く流通するようになりました。
鉄製ワイヤーは鎖や武器、釣り針などの実用品に、貴金属ワイヤーは、高価な装飾品の素材として作られました。
またイスラム世界では、宗教的・文化的背景から文様デザインが大変発展しました。金線・銀線による複雑で美しい文様の、素晴らしい宝飾品が数多く作られています。

産業革命〜近代:工業技術としての技術発展
産業が発展すると共に、より強く長いワイヤー製品が必要とされました。
各地で盛んに技術開発が行われた結果、19世紀前半英国にて熱処理でワイヤーの強度を上げる技術が完成し、この技術は英国で特許法が成立した時の第一号特許として認可されたそうです。(線材の材質調熱処理法をPatentingと呼ぶ)
その後も細く長くそして強いワイヤーを得るために様々な技術開発がなされ、現在ではワイヤーの用途はあらゆる分野に広がり、精密機械の極少パーツから橋を支えるケーブルまでに発展しました。

日常雑貨としての普及
ワイヤー製のバスケットなど生活雑貨を作る技術は、17世紀頃スロバキア地方で壊れた陶器を修繕したのが始まりと言われています。
18世紀には専門の職人達がヨーロッパ各国やアメリカに定住し、大規模な工房を開きました。そして生活雑貨からおもちゃ、芸術品まで幅広い製品が製造されました。

19世紀初頭。パリ産業博覧会にて宝飾的なワイヤー作品が出品され、その高度な技術と芸術性が非常に注目を集めました。それをきっかけにワイヤー製品は装飾用コレクションとしての地位を得、富裕層を中心に結婚式などの重要な行事用を主に、豪華な装飾品を特注する習慣が出来上がりました。

その後産業革命によって、より芸術的な新商品が安く製品化され、豪華なワイヤー製品が大流行し、一種のステータスとなったそうです。
パリのデパート 「Le Printemps」1905年のカタログによると、
/折り畳み式ワイヤーバスケット/ランプシェード/花びん/エッグスタンド/フロアランプ/婦人用 バスケット/カード入れなど、様々な商品が掲載されています。

古いワイヤー製品は、現在アンティークとしての価値が認められており、各地で熱心なコレクターによって収集の対象となっているとのこと。この時代のアンティーク品やレプリカ雑貨は、日本でもショップや雑誌で見ることができます。

現在〜
現在、ワイヤーを使った日用品、芸術品は、世界中で広く作られています。
彫金・ジュエリー、伝統的工芸品、アートとして、ワイヤーを使ったクラフト・彫刻は大変盛んです。
工業製品としては日常雑貨品や金網の他、鋼材、工業用など、私達が普段気が付かない分野にも、ワイヤー製品は驚くほど幅広く使われています。
曲げ・編むなど、ワイヤーを2次3次加工する機械も日々発展しています。

人間の生活を便利に豊かにする製品として、
手の暖かみを生かしたクラフト作品として。
ワイヤーを使った製品は、今後とも広く作られていくことでしょう。